睡眠不足になると、感情のコントロールが難しくなり、ちょっとしたことでもイライラしたり、怒りっぽくなったりします。これは単なる気分の問題ではなく、脳の機能に直接関係しています。具体的には「扁桃体」と呼ばれる感情を司る領域が過剰に反応し、一方でその暴走を抑える前頭前野の働きが弱まるのです。結果として、普段なら流せる小さなストレスにも強く反応してしまい、感情の起伏が激しくなります。
イライラは本人にとっても苦痛ですが、それ以上に周囲との関係を悪化させるリスクが高いのが特徴です。職場では同僚や部下との関係がぎくしゃくし、家庭ではパートナーや子どもとの衝突につながります。「また怒ってしまった」という後悔が積み重なると、自己嫌悪や罪悪感が増し、さらに心が不安定になっていきます。まさに悪循環です。
また、睡眠不足で情緒が不安定になると、不安感や抑うつ傾向も強まりやすくなります。これはストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が増えることも一因です。慢性的なストレス状態にさらされることで、心身の疲弊が加速してしまうのです。
イライラや感情の不安定さは、本人の努力や意志の弱さではなく、脳の状態に直結する生理的な反応です。だからこそ、周囲の理解を得にくい一方で本人にとっては切実な悩みとなり、「何とか改善したい」と思っている方も多いでしょう。