睡眠不足は「眠いだけ」で済まない、非常に大きな社会的リスクを引き起こします。その最たるものが交通事故や労災事故の増加です。睡眠不足になると、まず反応速度が落ちます。赤信号に気づくまでの時間が遅れたり、ブレーキを踏む判断が一瞬遅れたりすることで、事故の危険が一気に高まります。アメリカの研究では、睡眠不足のドライバーはアルコールを摂取した人と同じかそれ以上に事故率が高いという結果も出ています。
また、強い眠気によって「マイクロスリープ」と呼ばれる数秒間の居眠りが突然起こることがあります。本人に自覚がないまま一瞬意識を失うため、高速道路の運転や重機の操作中に発生すれば、命に関わる重大事故につながります。これは交通事故だけでなく、建設現場や工場、医療現場などでも深刻な問題です。
労災リスクについても同様です。睡眠不足の状態では集中力や注意力が低下しているため、機械の操作ミスや確認不足が増えます。その結果、転倒や切創、感電といった事故が起こりやすくなります。特に夜勤や交代勤務の現場では、慢性的な睡眠不足が事故の温床となるケースが多く報告されています。
この問題のつらさは「本人だけでなく周囲を巻き込む」点にあります。交通事故や労災は、自分自身のケガや命の危険に直結するだけでなく、他人を傷つけてしまうリスクを抱えています。「もし自分の眠気が原因で誰かを危険にさらしたら」という恐怖や罪悪感は、非常に強い精神的ペインとなります。
つまり、睡眠不足は単なる健康上の問題にとどまらず、社会的責任や安全に関わる重大なリスク要因なのです。そのため「何としても解決したい」と強いニーズが生まれる症状であるといえます。