夜型をやめたら前髪が戻った|在宅デザイナーMさんの睡眠改革

これは30代前半・女性・Mさんの話。

在宅中心のデザイナーとして働くMさんは、案件の締切に追われると作業時間が夜に長引き、ベッドに入るのはいつも深夜1時を回っていた。眠りは浅く、朝はだるさが抜けない。鏡の前で前髪を整えるたびに、分け目の地肌が少しずつ広がって見える気がして、ドライヤーの風量を上げてもふわりと立ち上がらない。睡眠不足が続くと肌のくすみも気になる。仕事は楽しいのに、コンディションがついてこない。

決定打は、プレゼン当日の朝だった。前夜の資料修正で寝不足のまま臨んだ本番、言葉が空回りして要点が伝わらない。終わってから撮られた集合写真に、疲れた目元とペタンとした前髪がはっきり写っていた。Mさんは自分の生活を変えることを決めた。「まず、眠ることを最優先にしよう」。

彼女は最初に“時間の枠”を固定した。23時就寝・6時半起床。平日も休日も変えない。仕事は21時で切り上げ、22時に画面をすべて閉じる“デジタル門限”を設定。守れなかった日は、翌朝の起床だけは必ず同じ時間にした。夜はベッドサイドに紙の本を置き、10分読んだらライトを落として腹式呼吸。眠気が来なければ焦らず、静かに目を閉じて呼吸に戻る。

朝は、窓辺で太陽光を浴びながら白湯を飲むことから始めた。晴れの日はベランダで5分のストレッチ。曇りや雨の日は、照度の高い照明に切り替えて代替する。昼のカフェインは12時までに限定し、午後はルイボスティーやカモミールに置き換えた。夜のアルコールは週1回、少量だけ。

寝室も整えた。遮光カーテンに替え、エアコンで室温は26℃前後、湿度は50〜60%を目安に管理。ベッドは沈み込みすぎない中反発マットレス、枕は肩幅に合わせて高さを微調整。枕カバーは摩擦の少ない生地に変え、寝返りで前髪がつぶれにくくした。就寝1時間前のバスタイムは38〜39℃のぬるめの湯に10分浸かり、浴室を出たら首と肩を軽くほぐす。スマホの代わりに小さなアロマディフューザーを点け、香りは日替わりで少量だけ。

ヘアケアは“減らす勇気”を選んだ。強い洗浄のシャンプーやスカルプ系のアイテムをいったん休み、指の腹だけで優しく1分洗い。帰宅後は早めにスタイリング剤を落とし、タオルは押さえるだけ。ドライヤーは顔から15cm以上離して温風→冷風で仕上げる。日中は結び目の強いヘアアレンジを避けて、前髪の分け目も固定しない。

食事は「高タンパク+彩り野菜」を合言葉に、朝はオートミールとヨーグルト、昼は鶏むねと雑穀、夜は魚とオリーブオイル中心に。鉄や亜鉛を意識して、赤身肉やあさり、卵、海藻を週に数回取り入れる。お菓子は“15時まで・小袋1つ”のルールにし、仕事が遅くなる日はプロテインを活用した。

2週間ほどで、夜中の覚醒が減ってきた。1か月後、朝のスイッチが入りやすくなり、午前の集中が続く。肌のトーンが少し明るくなり、メイクのりが良い日が増えた。シャワー後の排水口に溜まる抜け毛の量が目に見えて少なくなったことに気づき、ドライヤーで根元を起こすと、ふわっと戻る感覚がわずかにある。

3か月目、友人との写真を見返すと、分け目の“線の強さ”が和らいでいる。美容室では担当のスタイリストに「睡眠を整えたのが効いてると思いますよ」と言われた。Mさん自身も、朝の身支度にかける時間が短くなったことに驚いた。前髪が決まらない朝の小さなストレスが消えるだけで、一日が少し軽くなる。

仕事の質も変わった。深夜作業をやめ、午前のクリエイティブな時間帯に企画を進めるようにすると、迷いが減って決定が早い。クライアントとの打ち合わせでも、“言葉の輪郭”がはっきりして、提案の通りが良くなった。夜は23時に眠気が自然と訪れ、目覚ましより少し早く目が開く。

もちろん波はある。納期が重なる週は寝る時間が押すこともあった。それでも“起床は固定・午後のカフェインはゼロ・15分の仮眠で立て直す”の3点だけは崩さない。ルールがシンプルだから、忙しい日も戻ってこられる。半年が過ぎた頃、Mさんは「髪のことで悩む時間が減った」と話す。睡眠を真ん中に置く暮らしは、見た目だけでなく、心の沈み込みや仕事の手応えにも静かに効いていった。

Mさんは言う。「劇的な裏ワザはないけれど、眠る時間を守ったら、日中の“私”がちゃんと働いてくれる。髪も、その延長にいました」。


チェックポイント!
  • 就寝23:00・起床6:30を固定 — 平日も休日も同じリズムで体内時計を整える。
  • 22:00デジタル門限 — 画面を閉じて紙の本+腹式呼吸で入眠準備。
  • 朝の光を5分浴びる — 天候不良時は高照度の室内光で代替。
  • 午後のカフェインは12時まで — 以降はハーブティーや白湯に置き換え。
  • 就寝1時間前に38〜39℃で入浴 — ぬるめ×10分+軽いストレッチ。
  • 寝具と摩擦対策 — 中反発マットレス・枕高調整・摩擦の少ない枕カバー。
  • “守るヘアケア”に切替 — やさしく短時間洗い、温風→冷風でドライ。
  • 高タンパク+彩り野菜を習慣化 — 鉄・亜鉛を食事中心に意識。

※個人の特定を防ぐため、一部脚色しておりますこと、ご了承ください。

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